噛み合わせ治療

咬合治療とは?

咬合(こうごう)とは、歯のかみ合わせのことです。
「ちゃんとごはんも食べられるし、私は歯のかみ合わせには問題がない」「歯並びがいいから私は大丈夫」と思われるかもしれませんが、実は症状が出ていないだけで、かみ合わせが正しくないことがよくあります。

この患者様は現在矯正中です。左の写真を見ると一見とても歯並びが良い方に見えます。
しかし、噛み合わせを見てみると右写真の様に噛めていない歯があるのです。

良い噛み合わせとは、見た目だけでなくバランス良く噛めている噛み合わせの状態を言うのです。ですからこの患者様も積極的に矯正に取り組んでおります。

噛み合わせが悪いと、「しっかり噛めている歯」と「しっかり噛めていない、または全く噛めていない歯」とに分かれます。これはとても歯にとって悪条件です。

なぜなら、しっかり噛めている歯が噛めていない歯の分まで仕事をしなければいけなくなり大きな負担となるからです。大きな負担がかかった歯はやがてすり減ったり、歯周の組織(骨や歯肉)が退縮してしまいます。力の負担は歯周病にも繋がりますので、バランスの良い全体でしっかり噛めている噛み合わせはとても重要なのです。

噛み合わせが悪くなる原因

噛み合わせが悪くなってしまう原因は、先天的(遺伝的)なものと後天的(環境的)なものに大きく分けることが出来ます。

  • 先天的なものが原因:生まれつきの骨格の問題などでかみ合わせが悪くなってしまう。
  • 後天的なものが原因:指しゃぶりや頬づえや、口呼吸などの生活習慣で噛み合わせが悪くなってしまう。

上下の顎のバランスが悪いまま大人になると、顎の関節(顎関節;がくかんせつ)や顎の周りの筋肉のバランスも悪くなってしまいます。そのままでいると全身のバランスも悪くなり、体に症状が出たり、顎に痛みが出て来たりします。

これは、かかとの高さが違う靴をはいて歩くのに似ています。体が元気なうちは、「これでも歩けなくはないし、まあいいか」と思ってそのまま歩き続けていると、そのうち膝が痛くなり、腰が痛くなり、全身がだるくなってすぐに疲れてしまうはずです。

噛み合わせが原因で出てくる症状

まず、多くの人が気付くのが、顎の痛みや顎が鳴るといった症状です。

  • 顎に痛みがある
  • 大きく口を開けられない
  • 顎が鳴る

これらは、顎関節症(がくかんせつしょう)の典型的な症状です。

  • 頭痛、肩こり、首のこり、腰痛など、不定愁訴と呼ばれる症状
  • 耳の痛みや耳鳴り、難聴やめまいといった、耳周辺に出る症状
  • 目の疲れや充血、涙が出るという、目の周辺に出る症状
  • 歯や舌の痛み、味覚異常、口が乾く、食べ物を飲み込みにくいといった、口関連の症状

など、一見噛み合わせとは無関係に思われる症状が出る場合もあります。
顎(主に下あご)は、単に上下左右に動くだけではなく、非常に複雑な動きをして食べ物を噛んでいます。私たちがごはんを食べるとき、歯が受けた刺激が脳に伝わって、脳は顎を動かす筋肉に「顎をこう動かしなさい」という指示を出します。

噛み合わせが悪いと、悪い刺激が脳に伝わって、脳は「かみ合わせをずらすように!」と顎の筋肉に指示します。すると、顎がずれますから顎の筋肉が疲れ、首の筋肉が疲れ、肩の筋肉も疲れて頭痛になります。疲れた筋肉をフォローするために肩が上がり、肩が上がった分のバランスをとるために首が傾き、背骨や腰にも影響を与え、全身がゆがんで骨盤などにも影響が出てきます。体のゆがみによって神経が圧迫された箇所によっては、他にも様々な症状が出てくる可能性があります。

もちろん、上記に挙げた症状すべてが噛み合わせだけで解決するとは限りません。
複合的にいろいろな要素が絡んで、全身の症状となってあらわれているのかもしれません。しかし、他のあらゆる治療をためしたけれど一向によくならない場合、噛み合わせという原因が見落とされている可能性があります。

良いかみ合わせ、正しいかみ合わせとは?

噛み合わせた時に、全ての歯が同時に接触する状態が理想です。どこか一本(あるいは数本)の歯が邪魔をして全体の歯が接触していない場合、たとえ見た目の歯並びがきれいであっても、それは噛み合わせが正しいとは言えません。

私たちがごはんを食べる時、一番噛みやすいところで食べ物を食べようとします。邪魔をする歯があったり、噛みにくい箇所があったり、痛むところがあったら、そこを避けて食べ物を噛みます。

痛かったり噛みにくくないところで食べ物を噛むという事は、つまり顎を本来の位置からずらしているという事です。顎の関節の位置が変わると筋肉が緊張した状態が続き、徐々に問題が出てくるようになってしまいます。一番噛みやすい位置が、顎関節の本来の位置とイコールであるという状態が、良い噛み合わせと言えるでしょう。

噛み合わせ治療について

どのような歯科治療でも、噛み合わせの問題を避けて通る事は出来ません。
当院では、一本一本の歯の噛み合わせの面を、咬合紙(こうごうし)という赤色と青色の薄い紙を使って細かくチェックしていきます。患者さんに、赤色や青色の紙を歯でカチカチ噛んだり、左右にギリギリと動かして頂きます。悪い当たりがないかを注意深く確認しながら、ほんの少しずつ、ミクロン単位で調整していきます。


赤いインクの付いている個所がしっかりかめいている部分です。

予防が一番大事です

むし歯になれば歯を削って詰め物や被せ物をします。その度に、噛み合わせが変わります。歯が抜けてしまった時も同様、失った歯の代わりを入れなければいけませんから、その度に噛み合わせが変わります。歯周病がひどくなると、歯茎が弱って歯がグラグラになりますから、噛み合わせも変わります。噛み合わせが変わった事で、歯並びが悪くなってむし歯になりやすくなったり、歯周組織に負担がかかって、さらに歯を失いやすくなったりします。

歯を失った後、入れ歯が嫌でそのまま放置してしまう方がいらっしゃいますがそれは絶対にお勧めしません!!!確かに1本や2本歯を失っても、他の歯がしっかり噛めていれば支障なく食事できると思います。でも口腔内は段々に状態が悪くなっていきます。

なぜなら、歯は動くからです。歯を失うと、それまで接触していた隣在歯や噛み合っていた対合歯は本来の理想的な位置から悪い方向へゆっくりと移動していくのです。

そもそも、むし歯や歯周病を防ぐ事が一番大切だと言えます。
むし歯も歯周病も、定期検診を受けてクリーニングすることで、予防することが可能です。
むし歯や歯周病にならない生活習慣、噛み合わせを悪くしない生活習慣を心がけて、数ヶ月に一度の歯科医院での定期検診を受けて、あなたの歯を守ってください。